機能安全登録適合性証明機関 登録番号2

安全・環境マネジメント協会

ワールドスピリット

2021年6月9日 機能安全導入の第一歩 (第1話)


機能安全規格IEC 610508-1~7(電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全)の初版が2000年に発行されて20年以上が経過しました。

この規格は、乱暴に言えば、「システムの安全を センサCPUアクチュエータ を使って構築する手法の規定」です。そして、その手法は対象物の開発の開始から廃棄までの技術的、そして、その技術を活用する組織のシステムまでカバーされています。

この規格の大きな特徴は、「答え」がない、ということです。従来の規格の多くは、「高さ1mから直径25mmの鋼球を試験対象物に落とし・・・・・・目視によって異常が無ければ合格とする」というような具体的な数値と判定基準がありました。それがないのです。

答えが無い

答えのないことは日本人にとっては得意ではありません。それ故に、「何をしたら良いか分からない」、「難解」だ。ということになり、機能安全導入に躊躇することになります。まして、認証申請すると思いの外、高額な費用がかかってしまうことになります。結局、なかなか浸透してないのが現状だと思います。

もう一つ、規格が要求する技術的な部分、例えば、ハードウェアの信頼性などに組織内部では議論が偏ってしまいがちです。安全要求仕様を決める、技術を運用し発展させるなどの組織のシステムを構築する議論が、後回しにされてきたような気がします。機能安全では、これら両者をうまくバランスさせる必要があります。企業の中では開発部門が先行して知識を取り入れてしまいがちで、生産、品質保証、営業、管理などの部門はどうしても遅れてついていくことになり、組織全体として協調できずに目指すゴールになかなかたどりつかない結果なのだと思います。

一方、海外企業の多くは技術的な部分に加え、組織運用のシステムも重要視して、バランス良く機能安全を取り入れているような気がします。

私は仕事柄多くの日本企業と接触する機会がありますが、総じて優秀で勉強熱心だと感じます。だからこそ、その知識、経験(失敗を含めた経験も)を1つの部署に留めることなく少しだけ縦横に広げることで、組織運用システムの改革が出来るように思います。これはすなわち、機能安全導入の第一歩だと思います。技術的な部分は各分野の内外の専門家に任せれば良いことだし、正しいデータが揃えば、信頼性など、機械的に計算できるものだからです。

機能安全は難しくありません。「よし、機能安全を導入してみよう!」と思って頂くことができれば私にとっては喜びの限りです。なぜなら、やってみれば意外とハードルが低いことに気がついて頂けると思うからです。


- セイフティダイジェスト(公益社団法人日本保安用品協会)第57巻第9号 平成23年9月号(機能安全導入の第一歩: 石田豊)の【はじめに】から引用、加筆修正。