ワールドスピリット
2021年7月8日 機能安全導入の第一歩 (第3話)
安全はオープンであること
前稿では、事故原因について問われたときに当事者から「想定外」という語が発せられる、ということを一例として挙げました。それは多くの場合、背景に組織の思考停止状態があるのだと思います。
思考停止状態に陥ると、見えるはずのものが見えなくなります。安全を構築するには、安全に関しては何事もオープンにし、自由に議論が出来る「改革できる組織文化」が必要です。
日本には安全をオープンにして議論する、という発想が希薄でした。なぜなら、日本の産業界は、同じ業種に多くの企業がひしめき合い切磋琢磨してきたという特徴があります。その特徴により日本が国際競争力をつけた、というプラスの側面がありました。その反面、オープンにしなければならない「安全」に関連する情報が同業他社に知られたくないために企業秘密というベールに包まれてしまうことになってしまいました。
しかし、企業の活動が国際化することで日本国内の論理は通用しなくなってきました。発生した事故の原因を隠すのではなく、オープンにして、その対策を皆で検討し、そこから得られた安全要求仕様を次に役立てる知恵を働かせなければなりません。ただし、安全を構築する技術そのものの詳細は企業秘密であってもかまわないと思います。
(参考) “安全”という言葉の使い方についてJISで規定されています。以下、JIS Z 8051:2015 (ISO/IEC Guide 51:2014) より引用しました。
4 “安全”及び“安全な”という用語の使用
4.1 一般社会では,しばしば“安全”という用語は,全てのハザードから守られている状態と理解されている。しかし,正しくは,安全とは危害を引き起こすおそれがあると思われるハザードから守られている状態をいう(3.14参照)。製品又はシステムには,あるレベルのリスクが内在している。
4.2 “安全”及び“安全な”という用語は,特に有益なその他の情報を伝えない場合には,形容詞としての使用は避けることが望ましい。
さらに,“安全”及び“安全な”の用語はリスクがないことを保証していると誤解されやすいので,可能な限り目的を示す用語に置き換えることが望ましい(例)。
例 “安全ヘルメット”の代わりに“保護ヘルメット”。“安全インピーダンス装置”の代わりに“保護インピーダンス装置”。“安全床材”の代わりに“滑りにくい床材”